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Zero Trust2026年9月10日読了 167 views

Cloudflare DLP / CASB 設定ガイド

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所属: Cloudflare Japan 株式会社|得意分野: Cloudflare のこと

Cloudflare One の DLP(Data Loss Prevention)と CASB(Cloud Access Security Broker)は、プロファイル・検出エントリ・しきい値・適用先(Gateway / CASB統合)が独立したレイヤーとして存在する仕組みです。
重要な機能なのですが、設定が欠けると検知されないまま静かに素通りします。

本記事では、実際の設定作業でつまずきやすいポイントを、Cloudflare 公式ドキュメントの記述に基づいて整理します。

目次

  1. DLP の階層構造を理解する
  2. 検出エントリは個別に「有効化」が必要
  3. プロファイル設定(Profile settings)とは
  4. OCR(画像内テキスト検知)の設定
  5. しきい値と一致数 — 「質」と「量」の2つのフィルター
  6. Gateway への組み込み
  7. 方向(Body Phase)と対象アプリの絞り込み
  8. CASB との連携
  9. 対応ファイル形式・サイズの制約
  10. 設定前チェックリスト
  11. まとめ:症状 → 原因の切り分け
  12. 参考リンク

DLP の階層構造を理解する

Cloudflare の DLP は、以下の4つの階層で構成されています。この④まで完了しないと、①〜③をどれだけ正しく作っても DLP は一切機能しません。

階層 役割
① DLP プロファイル 検出エントリをまとめた「セット」(例:Financial Information、Credentials and Secrets)
② 検出エントリ 正規表現・アルゴリズム・AI トピック等の「個別の検知ロジック」。プロファイル内で個別に ON/OFF
③ プロファイル設定 しきい値・一致数・OCR 等の「発火条件の調整」
④ 適用先 Gateway HTTP ポリシー / CASB 統合に「実際に組み込む」

検出エントリは個別に「有効化」が必要

多くの事前定義プロファイルは、内部の検出エントリを個別に ON/OFF できる構造になっています。

To use a predefined profile, enable the detection entries you want and add the profile to a DLP policy.
— Cloudflare 公式ドキュメント

  • 正しい認識:プロファイルを選ぶ=中の検出エントリを1つずつ確認し、必要なものを ON にする
  • よくある誤解:プロファイル名を選べば、内包する全データ種別が自動的に検知対象になる

プロファイル名だけで安心せず、内部の検出エントリまで確認することが重要です。

プロファイル設定(Profile settings)とは

個々のプロファイルの「発火の厳しさ」を調整するパラメータです。アカウントレベル設定(DLP settings)とは役割が異なります。

設定項目 内容
Match count 1ファイル / HTTP 本文中の検出回数のしきい値
Confidence threshold 近接キーワード等による確からしさのしきい値
OCR(※移行中) 画像内テキストの抽出・検知。今後アカウントレベルに統合予定
AI context analysis(※移行中) 機械学習による周辺文脈評価。今後アカウントレベルに統合予定

OCR(画像内テキスト検知)の設定

OCR は2段階の設定で構成されています。

Step 1:アカウントレベルで ON
Zero Trust > Data loss prevention > DLP settings > OCR
OCR 機能そのものを有効化するマスタースイッチです。

Step 2:プロファイルごとに利用を選択
個別プロファイルの Settings > OCR
そのプロファイルで OCR 抽出結果を評価に使うかどうかを選択します。

対応形式には以下の制約があります。

項目 内容
対応拡張子 .jpg / .jpeg / .png
サイズ制限 4 KB 〜 1 MB

OCR はデフォルトで OFF です。アカウントレベルを ON にしていない、または対象プロファイルで OCR が選択されていないと、画像を渡すだけでは検知されません。1MB超の画像や非対応形式(PDF内スキャン画像など)も OCR 対象外のまま素通りします。

しきい値と一致数 — 「質」と「量」の2つのフィルター

Confidence threshold(質)

近接キーワード等による決定的なロジックで、ランダム性はありません。

  • Low(デフォルト):正規表現のみ、近接キーワードほぼ見ない — 最も広く拾う
  • Medium / High:追加検証で低確度の検出を除外

Match count(量)

Match count の実体は「無条件で許容される検出数」です。判定は「検出数 > 設定値」で行われ、設定値を超えて初めてアクション(ログ/ブロック)が発火します。重複カウント可(同じ番号が10回出現でも「10件」としてカウント)。

一致数 = 0 は「0件までは許容=1件でも発火」を意味する、最も敏感な設定です。
未定義動作ではありません。値を大きくするほど、まとまった件数が検出されるまでアクションを保留する(誤検知を抑制する)方向に働きます。逆に、少数の一致で確実に検知したい場合は 0(または未設定)のままにしておくのが適切です。

Gateway への組み込み

プロファイルを作っただけでは、通信は一切検査されません。以下の3ステップを経て初めて機能します。

  1. プロファイル作成 — 検出エントリを有効化
  2. Gateway ポリシーに追加 — HTTP ポリシーの DLP Profile セレクタへ
  3. Action 設定 — Block / Allow(Log) を選択

DLP not inspecting or blocking content is the most common issue reported. ...the cause is almost always that the traffic is not being decrypted.
— Cloudflare 公式トラブルシューティング

Test scan で検出できても、Gateway ポリシーに組み込まれていなければ本番トラフィックは無検査のままです。さらに TLS decryption(HTTPS インスペクション)がオフだと、HTTPS 本文は一切見えません。

方向(Body Phase)と対象アプリの絞り込み

Body Phase
Request Body(送信) / Response Body(受信)を分離指定できます。未指定時は両方を検査します。

Granular Controls
生成AIアプリでは対象 Operation(例:SendPrompt)を明示的に選ぶ必要があります。会話履歴取得(GetConversation)等は対象外になりやすい点に注意してください。

Operation 選択漏れがあると、ブロックした生成ストリームの内容が別経路(履歴取得等)で素通りする可能性があります。対象 Operation は網羅的に確認してください。

CASB との連携

CASB は Gateway とは別レイヤーの制約があります。

DLP プロファイルは CASB 統合にも個別追加が必要

CASB の「Content Findings」を出すには、DLP プロファイルを統合(Integration)側にも明示的に追加する必要があります(Cloud & SaaS > Integration > Configure > DLP profiles)。

If you add a DLP profile to an existing integration, CASB only scans files modified after you enabled the profile. To scan all files, enable during the integration setup flow.
— Cloudflare 公式ドキュメント

既存の静的ファイルはスキャン対象外のままです。全ファイルを対象にするには統合作成時に DLP を含める必要があります。ここでいう変更イベントとは、内容・名前・公開設定・オーナー・場所の変更を指します。

対応ファイル形式・サイズの制約

項目 内容
対応形式 テキストベース(文書・表計算・PDF)。画像は非対応
サイズ上限 100 MB 以下
Java / R ソース 5 KB 未満はスキップ
対象母集団の考え方 DLP finding は公開 / 社外共有 / 全社共有ファイルのみが対象母集団

プライベートファイルに機密データがあっても、共有状態が「公開・社外・全社」のいずれかでない限り DLP finding は出ません(Microsoft 365 / Google Workspace / Box / Dropbox 等、対応統合すべてに共通する仕様です)。

設定前チェックリスト

  • プロファイル内の検出エントリを個別に確認・有効化したか
  • 画像を検知したいなら OCR をアカウントレベルで ON にしたか
  • TLS decryption がオンになっているか(Gateway 利用時)
  • 生成AIアプリの Operation 選択に漏れがないか(履歴取得等)
  • Confidence threshold は用途に応じて調整したか(Low=広く拾う/High=誤検知を減らす)
  • Match count の意味(検出数がこの値を超えたら発火)を理解した上で設定しているか
  • DLP プロファイルを Gateway HTTP ポリシーに実際に組み込んだか
  • CASB 統合作成時に DLP プロファイルを含めたか(後付けは既存ファイル対象外)

判断に迷ったら本番前に Test scan で単体検証することをお勧めします。

まとめ:症状 → 原因の切り分け

症状 確認すべき原因
特定データ種別だけ検知されない 検出エントリの個別有効化漏れ(プロファイル名だけでは判断不可)
画像だけ検知されない OCR が OFF、または非対応形式・サイズ超過
Low 設定でも検知されない TLS decryption 未設定/検出エントリ自体が未有効化
Gateway では検知されるが本番で通過 ポリシー未組み込み/Body Phase・Operation 選択漏れ
CASB の Content Findings が出ない 統合側への DLP プロファイル未追加/後付け制約/対象母集団(公開共有のみ等)

設定は「多層」、確認も「多層」で行う必要があります。どこか一つが欠けても、エラーは出ずに静かに素通りしてしまいます。

参考リンク

本記事の内容は上記の Cloudflare 公式ドキュメントに基づいて作成しています。最新の仕様は必ず公式ドキュメントでご確認ください。

免責事項

本記事は Cloudflare Japan のソリューションエンジニアが技術的な知見の共有を目的として個人の立場で執筆したものです。記事の内容は執筆時点の情報および執筆者の主観的な見解を含んでおり、Cloudflare, Inc. の公式な見解・推奨・仕様保証を構成するものではありません。また、記載された構成や手順がすべてのお客様環境で同様に適用できることを保証するものでもありません。製品の正式な仕様や技術サポートについては、Cloudflare 公式ドキュメントまたは担当チームにお問い合わせください。